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木造アパート再生PJ

所在地:埼玉県
構造規模:木造2階建
     住戸数6戸

竣工:2022年

築40年以上を経過した木造賃貸アパートの再生プロジェクトです。
亡きお父様から引き継がれたこのアパートは、老朽化が進み修繕が必要な状態でした。
せっかく手を入れるのであれば、新しく入居してもらう人たちに快適なように、まちの人たちに愛着を持ってもらえるように、再生してあげたい。
そんな思いを持っていた最中、ちょうど半分にあたる3住戸が退去されたタイミングで、リノベーションを決意されたそうです。

このプロジェクトは、オーナーさん、賃貸管理をしている不動産屋さん、ご自宅の建設もしていただいた工務店さんの間でスタートして、そこに設計者である私が最後に加わり、チームで議論を重ねながら前に進めてきました。
駅から官庁街へ至る途中のまちなかで、どんな人がどんな目的で使ってくれるか、住戸か店舗か事務所か、住戸の場合は一人暮らしかファミリーなのか。古い建物を上手に楽しんで使ってもらえる入居者をイメージしながら、複数のプランをつくっては議論する時間は設計者としても楽しい時でした。

建て替えが進み変わっていく街並みの中でも、時間を経て大切に手入れされた建物として街に彩りを添える存在であり続けて欲しいと思っています。
この思いと、オーナー様との良きご縁により、居アーキテクツはこの一室にオフィスを構えさせていただきました。木造賃貸アパートの再生後の活用に、これからも参加させて頂きます。

【お客様からコメントをいただきました】 築45年。外観も間取りも昭和の香り漂う小さな木造アパート(1DK2室、2DK4室)を所有しています。立地が良いためか入居者様の移動が少なく、平均入居期間10数年、長い方では30年、40年以上も住んで頂いており、安定収入につながっていました。ところが2021年3月、4月、5月と2DK3室がほぼ同時に退去。 これまでは退去後の現状復帰的リフォーム(畳替え、クロス張替え、襖張替え、クリーニングなど)で比較的早く入居が決まっていました。しかし、築年数がたつほど物件としての価値は下がり、設備も古くなり、仲介の不動産屋さんからは「周辺に新しい物件も多く、家賃を大幅に下げないと、なかなか入居が決まらない」と言われました。 築古のボロアパートとはいえ父から相続したもので愛着があり、まだ入居者様もいらっしゃり、工務店さんは「しっかりした建物だからまだまだ大丈夫だよ」と言ってくれているので取り壊す気にはなれず、自分の年齢からして、これからアパートを新築するのも荷が重い。最低限の手を入れて現状を維持するならば、お金はさほどかからないが、築古アパートはどんどんみすぼらしくなっていく。それも忍びない。 昨今、古民家や50年以上の築古物件を活用している場面を見かけます。このアパートもやり方によっては生かし(活かし)続けられのではないか。そこで思い切って外観と空室となった3室のリノベーションに踏み切りました。 一間の押入れがついた4畳半と6畳、キッチン、お風呂、トイレという昭和の典型的な間取りから、新たに部屋をデザインしてくれるデザイナーさんは、「自宅近くの設計事務所」で「女性の建築家さん」がよいと考え、インターネットで探しました。距離的に遠いとメールやSNSを多用しがちですが、個人的にはface-to-faceでのやり取りをしたいこと、また女性の視点からのアイデアや細やかな工夫を盛り込んで頂ければと思ってのことでした。 現場を見て食指が動かなかったのか、何人かのデザイナーさんに断られましたが、居(いとま)アーキテクツ一級建築士事務所の上野先生が、「古いものを大切に使うのが好き」とおっしゃって、快くお引き受け下さいました。 設計にあたっては、仲介不動産屋さんから入居動向や需要が見込める間取りや設備を聞き取り、工務店さんには構造体(抜ける柱、抜けない柱の制約や補強、断熱、防音の追加など)について検討してもらいました。 上野先生は、最初にスケッチを何案も出して下さり(新築でもなく、狭いアパートのお部屋なのに申し訳ないと思いつつ)、その中で自然の光や風の流れをとても大切に思われていることがステキでした。また、何でも新しくするというのではなく、活用できるものは生かしていこう、というご姿勢もありがたかったです(予算的にも)。 そして、2室はフルリノベーションとし、1室は間取りそのままで、お部屋の印象や使いやすさを中心に改良することにしました。 フルリノベーションした2室はガラリと変わって、機能的でちょっとおしゃれなワンルームに変身しました。間取りそのままとした1室は、建具を替えたりペイントしたりして“レトロ可愛い”お部屋に生まれ変わりました。 外壁もしばらく塗装していませんでしたので、この機会に白を基調としてお化粧直しをし、2階通路の目隠し用フェンスと道路側のフェンスは同じ木材に落ちついた茶色のペイントを施し、建物全体にアクセントを付けました。 終わってみると、昭和レトロのたたずまいながら古臭さを感じさせず、モダンな表札も効果的で、むしろ味わいある外観に変貌しました。室内は機能的で住みやすくなり、築古アパートが「息を吹き返し」ました。思い切ってリノベーションして本当によかったです。 3室ともすぐに入居が決まりました。2室は20代前半の美容師さんとエスティシャンの若い女性。これまで考えられなかった年齢層のご入居で嬉しいやらビックリするやら。もう1室はオフィスとしてご利用頂くことになり、施工終了と同時に満室となりました。小さいながらもアパート経営ですので、時を置かずに収益を生み始めてくれてありがたかったです。 上野先生が、工事中の現場を足しげく見に来て下さったのも大きな安心材料でした。親の介護で外出もままならず、現場をなかなか見に行けない私が信頼してすべてをお任せできました。 上野先生、本当にありがとうございました!   さらにその後、31年住んで頂いたお部屋が空室となり、再び上野先生に設計をお願いしています。またどんなお部屋に生まれ変わるのか、とても楽しみです!
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